真・女神転生IV FINAL(ファイナル)

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2016 February 05真4Fと神話世界への旅

塩田信之の真4Fと神話世界への旅
第15回 テンカイと江戸曼荼羅

明智光秀同一人物説

また、天海に関する神話的イメージのひとつに挙げられるのが、「本能寺の変」で織田信長を裏切って「三日天下」を取ったとされる明智光秀との同一人物説です。もちろんその根拠には、天海の出自が不明だということがまずあるわけですが、ほかにもいろいろと理由が挙げられています。

徳川家康の死後、「東照大権現」として祀られることになった日光東照宮から眺める風光明媚な土地を「明智平」と名付けたのが天海。

三代将軍家光の乳母に取り立てられた「春日局」は、明智光秀の重臣斎藤利光の娘で、家光の母である織田信長の姪「お江」からすれば仇敵同然。そんな春日局が取り立てられた背後に、天海がいたのではないかと推測されている。

天海は死後「慈眼大師」の諡号を朝廷から送られたが、光秀の居城があった場所に「慈眼寺」があり、光秀の位牌と木像が残されている。

さまざまな説があるものの、どれも憶測の域を出ないため、同一説はあくまでも仮説です。それでも、光秀が生き延びて名や姿を変え徳川の世に返り咲いたとする筋立てが魅力的なのは確かで、民衆に広く支持されてきたということでしょう。
 戦国時代最大のヒーローといえる織田信長を裏切ったわけですから、明智光秀にはイエス・キリストにとってのユダのように悪人としてのイメージがついている印象があります。しかし、それは後世作られたもので比叡山焼き討ちなどを行った信長よりも家臣や民衆に愛されていたのではないか、という見方もあります。愛妻家で側室を持たない真面目で優しい性格や、長年謎とされてきた「本能寺の変」を起こした理由も最新の史料から長曾我部元親と親交のあった光秀が信長の四国攻めを阻止するために行ったのではないかという見方が有力になるなど、近年光秀を再評価する動きはあるので、今後また変化があるのかもしれません。

『真・女神転生IV』に登場しミッドタウン入り口を守っていたテンカイは、『真・女神転生IV FINAL』にも復活して再登場します。ゲーム中の25年前に「霊的国防兵器」として作られたテンカイについては、こんな歴史的な背景と仮説があるのだということを知っておくとより深く楽しめるのではないかと思います。

さて次回は、『真・女神転生IV FINAL』発売後初の更新となります。テーマは「シェーシャと世界竜神話」です。
 また、2月17日発売予定の『Febri Vol.33』(一迅社)にて、山井一千プロデューサーインタビューと、当連載の出張版「神話の中の『神殺し』」が掲載されます。インタビュー取材も塩田が担当しており、『神話世界への旅』についての話も伺っていますので、どうぞこちらもお手に取っていただければ幸いです。



塩田信之(NOBUYUKI SHIODA)

故成沢大輔氏と共に「CB’s PROJECT」を立ち上げ、『真・女神転生のすべて』『デビルサマナー ソウルハッカーズのすべて』など、これまで数多くのメガテン関連の攻略本やファンブックに携わってきたフリーライター。近著は『真・女神転生IV ワールドアナライズ』(一迅社)。
※ゲームに関する記述は取材と開発スタッフによる監修に基づいています。歴史・宗教観については諸説あり、ライター個人の解釈に基づいています。