真・女神転生IV FINAL(ファイナル)

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2016 February 12真4Fと神話世界への旅

塩田信之の真4Fと神話世界への旅
第16回 シェーシャと世界竜神話

「乳海攪拌」が行われる前の世界がまだ原初の水しかなかった頃、ヴィシュヌはすでに存在し、巨大なとぐろを巻いた蛇の上に寝そべっていたとされます。この蛇が「シェーシャ」で、『メガテン』ユーザーにとってはより馴染みのある「アナンタ」と同一存在とされています。より詳しくその名前から読み取っていくと、「アナンタ」には「無限の存在」という意味があって、「シェーシャ」には「余った部分」という意味があります。実はシェーシャあるいはアナンタもヴィシュヌの分身で、ヴィシュヌはその体の中にアナンタを取り込むことができるのですが、無限の存在であるアナンタはヴィシュヌからはみ出てしまうので、その余った部分が「シェーシャ」と呼ばれているのです。

「シェーシャの上に寝そべるヴィシュヌ」は「ナーラーヤナ」と呼ばれるヴィシュヌ派にとって非常に重要な題材のひとつですが、ヴィシュヌの「おヘソ」から伸びた蓮の花からブラフマーが生まれた姿でもあって、ブラフマーの存在を取り込んだ象徴でもあります。これを題材した像や絵画が古くから数多く作られていて、ベトナムやインドネシアの遺跡にも像が見られるあたりにヴィシュヌ派勢力の強さが窺えます。

シェーシャを含めたナーガ族は地下世界「パーターラ」に住むとされますが、シェーシャはそこですべての世界を頭上において支える重要な存在です。実は頭上にあるのは人間の世界だけでなく神々の世界を含む七層構造を内在した「宇宙卵」だったりもするので、そのスケールは想像を絶するものです。「世界を囲む竜」ではないものの、「世界を支える竜」という意味では「世界竜」と呼んで間違いありません『真・女神転生IV FINAL』の物語では「宇宙卵」と関係の深い存在として登場し、非常に重要な役どころにもなっているのは、こうした神話的背景があるからと覚えておいていただければと思います。

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 さて次回は、ゲームという枠組みを含めた物語の主人公の役どころを考えながら、「ジークフリードと英雄伝説」について掘り下げてみたいと思います。お楽しみに。


塩田信之(NOBUYUKI SHIODA)

故成沢大輔氏と共に「CB’s PROJECT」を立ち上げ、『真・女神転生のすべて』『デビルサマナー ソウルハッカーズのすべて』など、これまで数多くのメガテン関連の攻略本やファンブックに携わってきたフリーライター。近著は『真・女神転生IV ワールドアナライズ』(一迅社)。
※ゲームに関する記述は取材と開発スタッフによる監修に基づいています。歴史・宗教観については諸説あり、ライター個人の解釈に基づいています。