真・女神転生IV FINAL(ファイナル)

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2015 November 13真4Fと神話世界への旅

塩田信之の真4Fと神話世界への旅
第4回 神秘思想と悪魔サタン

こんにちは、塩田信之です。毎週、『真・女神転生IV FINAL』に関係するふたつのキーワードをとりあげ、そのルーツや現代に及ぼしている要素などを深く掘り下げていくことで、『真・女神転生IV FINAL』の面白さを解読していきます。開発スタッフの談話や制作メモなどから、シナリオや設定にまつわるさまざまなこぼれ話も紹介する予定です。


第4回 神秘思想と悪魔サタン

神秘主義とはなにか

宗教とその周辺に、「神秘主義者」あるいは「神秘思想家」などと呼ばれる人々がいます。色々な人がそんな風に呼ばれているので、どんな人なのかは一概には言えないのですが、とても昔から、言ってしまえば「宗教」というものが生まれた頃からいたものと考えられます。

例えばどんな人がそう呼ばれているのかというと、「聖女」などと呼ばれることもある幾人かの女性たちがまず挙げられます。「神の啓示を受け」た神秘体験を著書やみずから作曲した音楽という形で遺している12世紀ドイツの「ビンゲンのヒルデガルト」や、「神との合一」を謳い上げ修道院改革者としても知られる16世紀スペインの「イエズスのテレジア」(あるいは「アビラのテレサ」)といった人物が有名です。彼女たちはどちらも敬虔なキリスト教徒で、高い知性を持った人物として知られています。彼女たちは「幻視」あるいは自己の内面で神と出会い、啓示を受けたり「合一」を果たしています。彼女たちを「神秘主義者」と呼ぶ場合、「神との神秘的な体験を行った人」という意味合いになります。

また、神の神秘性を学術的あるいは論理的に追求しようとする人々がいます。こちらは「神学者」あるいは「哲学者」と呼ばれることも多く、ユダヤ教の神秘思想「カバラ」や、キリスト教以前から存在してはいたもののキリスト教とも結びついて神秘思想を発展させた「グノーシス主義」、イスラム教の神秘思想である「スーフィズム」といった知識体系を作り上げていった「神秘思想家」たちを指します。上に挙げた女性たちも「神秘体験」を元に「神秘思想」を構築していますが、「神秘思想家」と呼ぶ場合は実際に神秘的な体験をしていてもいなくてもいいという点で意味合いは変わってくると思われます。

どちらにしても、「神秘思想」あるいは「主義」という言葉は神に近づこうとする行為に対して使われています。「神のなんたるかを知りたい」「神と一体になりたい」「神のごとき力を得たい」といった心の動きに差異があったとしても、「神秘を求める」姿勢は共通しています。基本的には一神教ベースの考え方として使われるのですが、例えば仏教における密教の「真理を求める」姿勢は共通したものといえるでしょうし、現代において「スピリチュアルな」体験を求める行為は薬物摂取だったりトランスなどの音楽体験があったりと必ずしも宗教と連動してはいないわけですから、一神教とは関係ない立ち位置で「神秘思想」という言葉を使っても間違いではないはずです。この項を執筆する筆者の立場としては、歴史学者でも宗教学者でもない立場から、「錬金術」をはじめとするさまざまな「オカルト」志向全般も並べた広い視野で「神秘思想」「神秘主義」という言葉を使っています。