真・女神転生IV FINAL(ファイナル)

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2016 January 08真4Fと神話世界への旅

塩田信之の真4Fと神話世界への旅
第11回 人類の誕生と神々の誕生

人間に創造される神々

恐らくは文明がある程度成熟し、食料の確保や自然の驚異から身を守ることに腐心しなくてもよくなった頃、心に余裕ができた人間が「我々はどのように生まれたのだろう」と考えたことが、こうした創世神話や人類誕生神話の発生に繋がったものと思われます。そうした余裕を持つことができたのは、あるいは国の支配者や宗教的指導者といった立場にいたのではないでしょうか。人類を誕生させたのは神と呼ばれる偉大な存在で、自身をそれと同等の立場と民衆に信じさせることで支配力を拡大・維持していく。そんな構造があったのではないかと想像できます。

実際に大洪水が起こった時代にはまだ文字がなかったかもしれませんし、先祖からの言い伝えや他国から伝わってくる伝承を参考にするなどしたのでしょう。登場する神々は、王自身を投影したものだったり、一族の英雄的な祖先で、実際にあった出来事を土台にして偉大さを強調するために活躍が誇張されていく。そんな形で神話は発展したかもしれません。もちろん、語られている物語自体に「面白い」と思わせるものがなければ人々の支持は受けられませんし、長い歴史を経ても残ったりはしなかったでしょう。

逆の視点から見てみると、神々とその神話は人間側の都合によって作られたものともいえます。神話が人々に愛されれば、その神々も広く信仰されることになりますが、人気がなければ廃れてしまいます。現代まで生き残った神話が面白く感じられるのは、それだけの理由があるのです。

さて今回のテーマですが、実は「神々は人間がつくったもの」ということを再確認することが目的でした。これは、『真・女神転生IV』と『同 FINAL』における悪魔の存在がそのように定義されているからです。神や悪魔は人間が思い描いた姿で現れるもので、そもそも人間がいなければ存在することもできません。根底にこの考え方があることを理解することで、悪魔たちの意図や行動理由が見えてきますし、人間でなければ「神殺し」になれないということにも頷けるようになるわけです。ゲームで語られるメッセージの裏側を想像するためにも、これを心の片隅に置いてゲームに臨んでいただければと思います。

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さて次回は、「ナパイアと妖精伝説」のテーマでお送りします。お楽しみに。



塩田信之(NOBUYUKI SHIODA)

故成沢大輔氏と共に「CB’s PROJECT」を立ち上げ、『真・女神転生のすべて』『デビルサマナー ソウルハッカーズのすべて』など、これまで数多くのメガテン関連の攻略本やファンブックに携わってきたフリーライター。近著は『真・女神転生IV ワールドアナライズ』(一迅社)。
※ゲームに関する記述は取材と開発スタッフによる監修に基づいています。歴史・宗教観については諸説あり、ライター個人の解釈に基づいています。