真・女神転生IV FINAL(ファイナル)

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2016 February 26真4Fと神話世界への旅

塩田信之の真4Fと神話世界への旅
最終回 神話と歴史

古代に交易された「神話」

その後宗教の発達は多神教から一神教への流れが主流となり、多くの「古い宗教」とその神話は「邪教」とすら呼ばれる立場になっていきます。世界的な巨大宗教と規模の小さな宗教の差がはっきり分かれていき、小さなものの多くは宗教として存続できなくなってしまいました。インドのヒンドゥー教や日本の神道など例外はありますが、『ギリシア神話』など世界の主だった神話は基本的には過去の文化遺産として研究対象あるいは、それこそエンターテインメント作品として楽しむ対象として残っています。

こうした傾向は現代特有のものと考えがちですが、実は古代においても同じように捉えられていたとは考えられないでしょうか。
 特に、世界的にもっともよく知られた神話といえる『ギリシア神話』にはそうした傾向がよく見られます。その初期に文書化されたものがホメロスの『イリアス』と『オデッセイア』ということは、「第5回 メデューサとギリシア神話」でも触れましたが、この2作品の時点でもエンターテインメント性を見て取ることができます。これは、ホメロスが「吟唱詩人」として人々の前で歌っていたものが文書としてまとめられたことと無関係ではないでしょう。歌っていたこと自体は宗教的な儀式でも、即興で歌い上げたホメロスは聞いている人々の反応も意識していたはずです。そこから、観客が喜ぶような即興的展開を入れても不思議ではありませんし、それが『イリアス』と『オデッセイア』に反映されていたとしても不思議ではありません。

ギリシア神話は紀元前8世紀ごろのホメロス以降多数の作家たちによって拡張されていきました。紀元前6世紀には、古代ギリシャの首都アテネで「ギリシア悲劇」が多数作られ演劇の形で人々に親しまれるようになりました。現在『ギリシア神話』として知られている物語の多くは、さらに時代が下った紀元前2世紀ごろのアレクサンドリアでまとめられたものですが、もちろん「ギリシア悲劇」などの諸作品も神話の系統に含めています。
 演劇ともなればエンターテインメント性もいやが上にも高まろうというものですが、創作要素が多いほど元々の「古い神話」とは違ってきたでしょうし、ある意味後代の作家による「二次創作」とでも呼べそうな作品だってあります。そういったものまで取り込んで発展していった『ギリシア神話』は、ゲームや小説の世界でいう「シェアードワールド(世界設定共有)」の先駆けだったのかもしれません。