真・女神転生IV FINAL(ファイナル)

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2015 October 30真4Fと神話世界への旅

塩田信之の真4Fと神話世界への旅
第2回 ダグザとケルト神話

こんにちは、塩田信之です。毎週、『真・女神転生IV FINAL』に関係するふたつのキーワードをとりあげ、そのルーツや現代に及ぼしている要素などを深く掘り下げていくことで、『真・女神転生IV FINAL』の面白さを解読していきます。開発スタッフの談話や制作メモなどから、シナリオや設定にまつわるさまざまなこぼれ話も紹介する予定です。


第2回 ダグザとケルト神話

『メガテン』ファンとケルト神話

日本で「ケルト」という言葉が広く知られるようになったのは、1988年にイギリスをはじめ世界的にヒットしたエンヤの「オリノコ・フロウ」という曲がきっかけでした。透明感溢れる歌声を何重にも重ね、エコーの強めにかかった弦楽器中心の幻想的な音楽は、1980年代の洋楽ブームの終わり頃それまでにない新鮮な衝撃と感動を聴く者に与え、日本でも大ヒットしました。

エンヤの音楽はポップ・ミュージックとして流通しましたが、聴く者の多くが「懐かしい」「癒される」と感じた曲調は、歌っているアイルランド出身の歌手エンヤの、故郷に古くから伝わる民族音楽を基調としていたからです。それが、古代のヨーロッパに大きな勢力をもっていた「ケルト人」と呼ばれる人々の音楽が元になっているということが知られるようになり、「ケルト・ミュージック」が「癒しの音楽」としてちょっとしたブームになったのです。
 エンヤの音楽自体は、シンセサイザーを駆使したスタイルなどから見ても「ケルト・ミュージック」とは異なるものではありましたが、彼女の音楽がサウンドトラックに使用された『幻の民 ケルト人(The Celts)』というイギリスBBC制作のドキュメンタリー番組が日本でもNHKで放送され、「エンヤ=ケルト」という図式が定着したのだと思われます。
 このドキュメンタリー番組や、ケルト芸術文化研究の第一人者である鶴岡真弓氏の最初の書籍『ケルト/装飾的思考』が1989年に発行されるなどの動きが重なって、ケルト人の文化や神話が注目されるようになったものでした。

 ……というのが当時の「ケルトブーム」についての一般的な見解だと思いますが、『真・女神転生』シリーズのファンならちょっと違うという方もいたのではないかと思います。
『真・女神転生』のそのまたルーツにあたるファミコン版『デジタル・デビル物語 女神転生』(ナムコ)に登場した「幻魔クーフーリン」は、比較的早い時期に手に入るけれど、最後の頃まで活躍してくれる非常に心強い仲魔でした。ファミコンの目の粗いドットで表現された鎧武者風の姿もかっこよく見えたものです。そのクー・フーリンが「ケルト神話」に登場する英雄だということを知り、興味を持ったというユーザーもけっこういたのではないでしょうか。
 このファミコン版が発売されたのは1987年9月11日。エンヤのヒットにも先駆けてのことですね。そして、「ケルトブーム」の波がきてすぐの1990年4月6日に、第2作『デジタル・デビル物語 女神転生II』(ナムコ)が発売されます。なぜかレベルが下がってしまっていたりもしましたが、「タルカジャ」の使える仲魔として重宝したものです。その後『真・女神転生』になって「妖精クーフー・リン」になったりしつつ、「デスバウンド」等でめざましい活躍を見せてくれたりするシリーズ常連の悪魔となりました。ケルト神話に関する書籍がなかなかなかった頃でも、「ケルトの英雄クー・フーリン」の物語は比較的手に入りやすかったので、そこからケルト神話に手をつけたという方も多いのではないかと思います。

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