真・女神転生IV FINAL(ファイナル)

TOPICS

2016 March 25真4Fと神話世界への旅

塩田信之の真4Fと神話世界への旅
補遺編2 メフィストと悪魔を召喚する魔法使い

メフィストフェレスという「悪魔」

メフィストフェレスは、基本的には『聖書』に由来しない悪魔とされています。語源には諸説あって、ギリシア語やラテン語、あるいはヘブライ語の悪魔を連想させる言葉を合成したと考えられていますが、決定的な説はありません。中世にまとめられた「ファウスト伝説」には「メフォストフィレス」と読める綴りになっていて、クリストファー・マーロウの『フォースタス博士』はそれに倣っていました。

「ファウスト伝説」には悪魔が自身について語っている部分があって、堕天したルシファーが主でメフィストフェレス自身も「空を飛び天の下を治める存在」だとしています。あくまでも自称なので、確固たる背景が描写されているわけではなく、後の戯曲などで異なる背景が創作されていることもあります。ドイツに伝わる物語であることや、ファウスト博士を含む人間たちに幾度も幻覚を見せていることから、夢魔に近い存在とも考えられます。

ゲーテの『ファウスト』では人間を誘惑する存在として、『聖書』に描かれる「悪魔=サタン」に近い描かれ方をしているのが特徴で、物語冒頭では神と直接対話する位の高い存在であることも示唆されています。もうひとつの特徴として挙げられるのは「賭け」を好む性格で、「ファウスト博士を誘惑し堕落させる」ことは「神と交わした賭け」であり、ファウスト博士との契約時にも死後の魂の処遇について賭けを行っています。
 『ファウスト』の名言としてよく取り上げられる「時よ止まれ、お前は美しい」といったセリフがあるのですが、ファウスト博士はこのセリフを口にしたとき魂を明け渡すとして契約しました。第二部で死の床についたファウスト博士は、自身が開拓した美しい領地とそこに暮らす人々を見ながら、幸福が永遠に滅びることのないようその通りのセリフを口にします。しめしめとばかりに魂を取り上げようとするメフィストフェレスですが、結果的に「ファウスト博士を堕落させられなかった」ため「神との賭けに負けた」ということになるわけです。メフィストフェレスは天使を口汚く罵りますが、最後には自身の不覚を恥じつつ退場します。

0325_02

キリスト教文化における「悪魔」のイメージを、近代の演劇という枠の中発展していったのがメフィストフェレスといえますが、ある意味ファウスト博士以上に人間的なキャラクターとなったところに面白味が感じられる存在ではないでしょうか。

0325_01

 さて、当コラムは、補遺編も含めてこれで終了となります。最後までお付き合いいただきありがとうございました。


塩田信之(NOBUYUKI SHIODA)

故成沢大輔氏と共に「CB’s PROJECT」を立ち上げ、『真・女神転生のすべて』『デビルサマナー ソウルハッカーズのすべて』など、これまで数多くのメガテン関連の攻略本やファンブックに携わってきたフリーライター。近著は『真・女神転生IV ワールドアナライズ』(一迅社)。
※ゲームに関する記述は取材と開発スタッフによる監修に基づいています。歴史・宗教観については諸説あり、ライター個人の解釈に基づいています。