2016 January 08真4Fと神話世界への旅
塩田信之の真4Fと神話世界への旅
第11回 人類の誕生と神々の誕生
こんにちは、塩田信之です。毎週、『真・女神転生IV FINAL』に関係するふたつのキーワードをとりあげ、そのルーツや現代に及ぼしている要素などを深く掘り下げていくことで、『真・女神転生IV FINAL』の面白さを解読していきます。開発スタッフの談話や制作メモなどから、シナリオや設定にまつわるさまざまなこぼれ話も紹介する予定です。
第11回 人類の誕生と神々の誕生
人類は二度誕生する
現代の日本人なら本当にそれを信じるわけではないにしても、「最初の人類」といえばまず『聖書』の「アダムとイヴ」を思い出すのではないでしょうか。神が自分に似せて造ったという最初の男性アダムは、「天地創造」の7日間の6日目に神自身によって土の塵から造られ、鼻から息吹を吹き込まれることで生きた人間となります。少し詳しい人なら、最初に神が造ったのはアダムひとりで、寝ているアダムの胸から神が取り出した肋骨を使って女性が造られ夫婦となったことも知っているかもしれません。
アダムたちは「エデンの園」に暮らしていましたが、悪魔の化身とされるヘビにそそのかされ禁じられた「知恵の実」を食べてしまい、楽園を追放されます。楽園にいた間は永遠の命を持っていましたが、死んで塵に還る存在に変わります。この出来事は「失楽園」とも呼ばれ人類の祖先が引き起こした悲劇とされますが、考えようによっては無知なまま楽園で永久に生き続けるよりもよかったようにも思えます。実際、知恵をつけたアダムはそれでようやくパートナーに「イヴ」という名前をつけられましたし、ふたりに子供が生まれるのも追放後のことです。
アダムとイヴはまずカインとアベルという兄弟をもうけましたが、兄が弟を殺害し神による罰としてカインは放浪の旅に出てしまい、セトという三男をもうけることになります。カインはその後妻と息子エノクを得て遊牧民や音楽家、鍛冶師の祖となったようですが、一般的な聖書にはカインの妻が誰であったのかは書かれていません。普通に考えればアダムとイヴ以外にも人類の祖先がいたのだろうと思えますが、聖書の正典に含まれない外典にはアダムとイヴの長女だったとか、天使と人間の間に生まれた子供だったという説にもなっているようです。
セトの子孫に、「ノアの方舟」を作ったノアがいます。聖書におけるこの時代の人間たちはみんな長生きで1000年近く生きることも珍しくなかったようで、カインとセトの長命なふたつの家系で地に人が満ちるだけの長い年月が過ぎています。そこに至って神は、人類の悪行を見かねて滅ぼすことを決めました。大洪水を引き起こし、正しく生きていたノアの家系と方舟に乗せた動物たちだけが生き延びることになるわけです。ノアとその妻、セム、ハム、ヤペテの3人の息子たちと息子たちそれぞれの妻の8人が、この時点で改めて「最初の人類」となりますので、これは2度目の「人類の誕生」に等しい状況となります。
やや長くなりましたが、『聖書』における人類の誕生はこのようなあらましとなります。『聖書』自体がさまざまな神話の影響を受けて作られたものですが、世界各地の「人類誕生神話」を見ていく上で、共通要素を比較する指標になることも確かです。これを踏まえて、いくつかの地域の神話を見比べてみることにしましょう。