2016 January 15真4Fと神話世界への旅
塩田信之の真4Fと神話世界への旅
第12回 ナパイアと妖精伝説
ヨーロッパ以外の妖精たち
自然崇拝という意味でヨーロッパの妖精伝承と似た文化を持つ日本ではどうでしょう。民間に伝わる「神と人の間」に位置する存在としては、アイヌの「カムイ」がとても近いものといえますが、その多くが「妖怪」と考えられるようになった「八百万の神」ももちろん同様です。「神と人の間」というよりは「悪魔と人の間」といったほうがいいようなイメージもありますが、ヨーロッパの妖精たちもいたずら好きで時に人間を襲ったりするものがいるため、妖怪とは共通する部分も多いのです。
ニンフに近い存在としては、「天女」を挙げることができるでしょう。地上に降りて水浴びしてるところを人間に目撃され、羽衣を取られたため天界に戻ることができず人間と結婚することになる筋立ても、ニンフに通じる要素です。「天女」を挙げるなら、そのルーツともいえそうな中国の「仙女」や、仏教における「飛天」、インドの「アプサラス」、イスラム教の「フーリー」といった存在も同列といえますが、これらの存在を見ているといわゆる「天使」たちもまた同様に思えてきます。
実際、『旧約聖書』には人間の女性に惚れて結ばれる天使も少なからず登場しています。ことによっては天使であると偽っている「インキュバス」もいるかもしれませんが、インキュバスも妖精の一種と分類できるため、それも当然といえるでしょう。なにか悪いことをしたときに言い訳としてよく使われる「魔がさした」の「魔」だって妖精の一種といえそうですし、「おとぎ話」に出てくる妖精たちは意外と現代においてもその姿が見えないだけでずっと生き続けているのかもしれません。
さて次回は、「イナンナとオリエント神話」をお送ります。お楽しみに。
塩田信之(NOBUYUKI SHIODA)
故成沢大輔氏と共に「CB’s PROJECT」を立ち上げ、『真・女神転生のすべて』『デビルサマナー ソウルハッカーズのすべて』など、これまで数多くのメガテン関連の攻略本やファンブックに携わってきたフリーライター。近著は『真・女神転生IV ワールドアナライズ』(一迅社)。
※ゲームに関する記述は取材と開発スタッフによる監修に基づいています。歴史・宗教観については諸説あり、ライター個人の解釈に基づいています。