真・女神転生IV FINAL(ファイナル)

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2016 January 29真4Fと神話世界への旅

塩田信之の真4Fと神話世界への旅
第14回 アドラメレクと邪教の魔神たち

こんにちは、塩田信之です。毎週、『真・女神転生IV FINAL』に関係するふたつのキーワードをとりあげ、そのルーツや現代に及ぼしている要素などを深く掘り下げていくことで、『真・女神転生IV FINAL』の面白さを解読していきます。開発スタッフの談話や制作メモなどから、シナリオや設定にまつわるさまざまなこぼれ話も紹介する予定です。


第14回 アドラメレクと邪教の魔神たち

日本にやってきた悪魔

「悪魔」という言葉自体は現代日本で一般名詞として使われています。でも考えてみると、どんな存在が「悪魔」なのかは人によって違ってくるのではないでしょうか。

「悪魔」と聞いて思い浮かべるイメージとして比較的一般的と思われるのは、頭に角があって、背中にはコウモリのような羽が生え、ムチのような尻尾を持つ魔物ではないかと思います。尻尾の先端が矢印のように尖っていたりするイメージも多いかもしれません。頭と胴体、四肢については人間に近い形をしていますが、顔つきが凶悪だったり、肌の色が違っていて場合によっては爬虫類のような皮やウロコに覆われていたりする場合もあって、一見して人間ではないことは明白な存在です。二又や三又の槍に似た武器を手にしたパターンも多そうです。

さまざまな妖怪伝説が古くから伝わる日本でもあまりそういった見た目の魔物はいなかったので、西洋から輸入されてきたものと思われますが、このイメージ自体はずいぶん広く一般に浸透しているようです。上に書いたようなイメージは西洋で「インプ」などと呼ばれる下級の悪魔にもよく見られるものですが、日本にいつごろ入ってきたかについてはやはりキリスト教の伝来に伴ったものと考えられます。言語の異なる地域での布教には一見して理解しやすい宗教画は欠かせませんし、悪魔の誘惑は教えの根幹に関わってくる要素ですから、信者は悪魔のイメージを何度も繰り返し目にしたのではないかと思います。

デーモンやデビル、サタンといった元々の名称は日本で仏教用語の「悪魔」があてられることになったわけですが、これは「悪行をなす魔」として釈迦の瞑想を妨げた存在からきている仏敵を意味する言葉なので、イエス・キリストを誘惑した悪魔と考え方としては同じものと言えます。釈迦の邪魔をした悪魔が「マーラ」で、イエスを誘惑した悪魔が「サタン」ですから、どちらも『メガテン』好きにはおなじみの顔ぶれですね。

ツノがある悪魔の外見的なイメージから、日本では馴染みのある「鬼」に関連付けされました。鬼の伝承にはたまに心優しい個体も出てきますが、鬼といえば基本的には人間に悪さをする存在ですから、キリスト教や仏教の「悪魔」のイメージとも馴染みやすかったことも広く浸透していった理由なのでしょう。現在「悪魔」は「悪魔のような~」といった比喩表現にもよく使われますが、「鬼のような~」という言い回しもそうですが、恐ろしいイメージだけでなく単純に「すごい」という表現のバリエーションになっているところも興味深いところです。

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