真・女神転生IV FINAL(ファイナル)

TOPICS

2016 February 26真4Fと神話世界への旅

塩田信之の真4Fと神話世界への旅
最終回 神話と歴史

こんにちは、塩田信之です。毎週、『真・女神転生IV FINAL』に関係するふたつのキーワードをとりあげ、そのルーツや現代に及ぼしている要素などを深く掘り下げていくことで、『真・女神転生IV FINAL』の面白さを解読していきます。開発スタッフの談話や制作メモなどから、シナリオや設定にまつわるさまざまなこぼれ話も紹介する予定です。


最終回 神話と歴史

儀礼からエンターテインメントへ

改めて言うまでもないことではありますが、さまざまな地域や民族に伝わる神話は、それ自体がとても面白いものばかりです。宗教的な要素が大なり小なり入っていて、どこか説教くさく感じられる場面があったとしても、登場する神々や英雄たちが個性豊かに描かれ、わくわくするような冒険が行われたり、幸福な結果ばかりとは限らない成り行きに息をのんだりもします。現代のそれとは少々趣は異なりますが、神話は一種のエンターテインメント作品として楽しむことのできる物語なのです。

しかし、神話は初めからエンターテインメント作品として作られたわけではありません。現在触れることのできる神話がエンターテインメント作品と思われるものだったとしても、その神話が誕生した時のままの姿とは言い切れないのです。古い神話は、人間がまだ文字による読み書きもできないような時代に生まれ、長い間語り継がれた後に文書としてまとめられた経緯があります。語り継がれる間にも変化していったでしょうし、文書化される際にもそれを行った者の立場や社会の影響がなかったとは言えません。

日本の神話でいえば、飛鳥時代末期に成立したとされる『古事記』と、奈良時代初期に編纂された『日本書紀』が基本文献となりますが、どちらも同じ日本の神話と歴史を扱っている公的な文書でありながら、あちこちに大小さまざまな違いがあります。違いが生じた理由は必ずしも解明されてはいないのですが、主に政治的な事情があったものとされています。成立した年は8年しか違わないのに、時の権力者や編纂姿勢の違いによって歴史自体が変わってしまうほどの差異が生じてしまうのですから、他の神話についても容易に変わってきたと考えるのが自然です。

もっとも初期の神の概念は、恐らく人類の原始的な暮らしの中で発生したものと思われます。さまざまな自然現象そのものに神性を見出し、自分たちに害を及ぼさないよう崇める「自然崇拝」的なものがまずあって、当初実体を持たない「現象」だったものに肉体や人格を加えていくことで神になっていった経緯が想像できます。世界のあちこちの神話で(古い)主神とされるのが「雷」を司る神なのは、大雨を呼び川の氾濫を引き起こして人々の生活に甚大な被害をもたらすからと考えられます。これは古い神話によくある「洪水神話」にも繋がってくる要素ですが、この段階ではまだ「神話」は口承レベルにあることが多く、文書化されるのは後の話です。