真・女神転生IV FINAL(ファイナル)

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2016 February 26真4Fと神話世界への旅

塩田信之の真4Fと神話世界への旅
最終回 神話と歴史

神話がエンターテインメント作品として楽しまれていたのではないかと考えたくなるもうひとつの理由は、「アレクサンドリア大図書館」に代表される古代の図書館でさまざまな神話が収集されていたことです。もちろん、図書館とはいっても現代日本の図書館とは蔵書も利用者もまったく違うものですが、単に「王宮の記録庫」と呼ぶには神話等の文献が多く保管されていた事実が多いのです。
 シュメールやアッカドの『オリエント神話』の文献が多数発見されているのも、そうした「図書館」の遺跡がいくつも発見されたからで、バグダッドに近いニップール遺跡には「シュメール文学カタログ」と呼べる62作品のタイトルが並ぶ粘土板も発見されています。宗教儀式に使うためとも考えられますが、王族らが物語として楽しんでいたと想像したくなります。そんな状況があったからこそ「第11回 人類の誕生と神々の誕生」にも書いた通り、バラバラに作られていたギルガメシュ関連の物語が後に『ギルガメシュ叙事詩』として1本の長編にまとめられたのではないかとも思うのです。

『千夜一夜物語』などの場面で、王が旅人に「外国の面白い話」を聞かせてくれとせがむ姿がよく描かれていますが、「古代の図書館」はそうした風景が実際によくあったのではないかと思わせてくれます。まだ国家というものがないような時代でも、人々は広範囲にわたる交易を行っていたことが遺跡の調査などで確認できています。世界各地に同じモチーフの神話がみられることはそうした交易とともに神話も伝播したと考えられていますが、もしかしたら神話は物資以上に貴重な商材として交易に用いられたのかもしれません。いつの時代、世界のどの地域にも、きっと神話などの物語を楽しむ人たちはいたと思われますし、物資のやり取りだけよりも『神話』を語り合うことで異文化交流がスムーズになって文化が広がりやすくなったのではないでしょうか。

18週、約5カ月にわたる連載となりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございます。ゲームに登場する悪魔について、こんなことも知ってるとより楽しめるのではないか、ということでテーマを選んでまいりました。『真・女神転生IV FINAL』を遊んでいく上で、少しでも「プラスアルファ」を感じ取っていただければ幸いです。
また何かの機会に再会できることを楽しみにしております。

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塩田信之(NOBUYUKI SHIODA)

故成沢大輔氏と共に「CB’s PROJECT」を立ち上げ、『真・女神転生のすべて』『デビルサマナー ソウルハッカーズのすべて』など、これまで数多くのメガテン関連の攻略本やファンブックに携わってきたフリーライター。近著は『真・女神転生IV ワールドアナライズ』(一迅社)。
※ゲームに関する記述は取材と開発スタッフによる監修に基づいています。歴史・宗教観については諸説あり、ライター個人の解釈に基づいています。