2015 November 13真4Fと神話世界への旅
塩田信之の真4Fと神話世界への旅
第4回 神秘思想と悪魔サタン
神はなぜサタンを生み出したのか
善と悪とに関わらず多くの神が登場する多神教の世界観では、神や人間に敵対する存在もそういう性格の神であると捉えることができますが、唯一の神が世界すべてを創り出す一神教の世界観においては悪魔ですら「神が創り出した」存在となるため、「どうして悪魔などというものを創ったのか」という根源的な疑問が生まれてしまいます。「人間に与える試練として」創られた存在ならば、あくまでも神が優位存在で被造物の立場である悪魔との対立はバランスを欠いたものになってしまいます。また、悪魔によって苦しめられる人間を救わない神は非情な存在にも見えてしまうことでしょう。「もともと神の一部だった部分が独立して悪魔となった」とするなら、神にもともと邪悪な部分があったのだからすべての元凶も神だったということになりますし、独立することを阻止できなかった神の「全能の力」にも疑問を抱かれかねません。
一神教の指導者たちはそんな疑念を払拭するためにさまざまな理由付けを行うものですが、そう簡単にうまい理由を用意することはできません。さまざまな神秘思想には、そんな疑問に対する「答え」を見つけ出そうとする努力から誕生したという側面があります。
宗教に深く関わろうとすると、ある者は懐疑心から、またある者は信じてはいるものの他者から指摘されたり、自身で気づいたりして教理に潜む矛盾点と対峙することになります。普通の人ならば教団の上位にいる者に疑問を投げかけて、納得できるかどうかは別としてなんらかの答えが得られればいいかもしれませんが、神秘思想家たちはその理由を突き止めなければいられなかったのでしょう。聖典を隅から隅まで熟読し、答えとなるような記述を探します。直接的な答えが見つからなかった場合、解釈次第で答えにつながるような情報を探し出して多少強引にでも解決への道筋を立てるのです。
導き出した「答え」はおおむね「寓話」という形式で語られることになります。これが教団の主流となる思想から外れなければいいのですが、独創的に過ぎたり教団の意向に沿わないものが出来てしまった場合、「異端」と断ぜられ排斥されることになります。いわゆる「神秘思想」の多くは教団にとって「異端」なのです。