真・女神転生IV FINAL(ファイナル)

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2015 October 23真4Fと神話世界への旅

塩田信之の真4Fと神話世界への旅
第1回 一神教と多神教

こんにちは、塩田信之です。毎週、『真・女神転生IV FINAL』に関係するふたつのキーワードをとりあげ、そのルーツや現代に及ぼしている要素などを深く掘り下げていくことで、『真・女神転生IV FINAL』の面白さを解読していきます。開発スタッフの談話や制作メモなどから、シナリオや設定にまつわるさまざまなこぼれ話も紹介する予定です。


第1回 一神教と多神教

天使と悪魔が対立するようになったわけ

前作『真・女神転生IV』は、天使と悪魔の対立に主人公が巻き込まれる形で物語が進行しました。しかし、そもそも天使と悪魔はどうして対立していたのでしょう。それは天使と悪魔という存在自体が、そもそも対立しているものとして人類の長い歴史に語り継がれてきたからです。

天使と悪魔が対立するという考え方は、基本的にはキリスト教的な概念として広く知られています。実際には、必ずしもキリスト教に限った話ではありませんし、「天使」はともかく「悪魔」という言葉は仏教用語にもありますし、悪人を「悪魔のような」と比喩表現に使ったりするように日常的に使われる一般名詞になっているのですから、日本人は特に悪魔と聞いて「キリスト教における悪魔」を思い浮かべる人は少ないかもしれません。『真・女神転生』シリーズにおいて「悪魔」という言葉にはさらに広い意味が含まれていて、神や天使も「悪魔」と呼んでいるわけですが、ここでは話がややこしくなってしまうのでキリスト教的な「天使と悪魔」に絞って話を進めます。

キリスト教的な「天使と悪魔」は、まず「神と人間」の関係が中心にあって、そこに関与する形で加わってくることになります。人間は神によって創造され、「神の教え」を守っていくことで守護されたり死後天国に行けることになっています。この「神の教え」というのが重要で、基本はいわゆる「モーセの十戒」と呼ばれているものですが、「姦淫することなかれ」とか「嘘をつくな」とか道徳教育的な、人の生きる上でのルールになっています。神を信じるということは、ルールを守って正しく生きていけば、死んだときに天国に入れてあげるという「契約」を神と交わしたことになるわけです。
 さてここで登場するのが悪魔という存在で、悪魔は神に敵対しているため、人間が神との契約を履行できないよう邪魔をします。人間を「誘惑」して、契約に反した不道徳な行為をさせようとするわけです。象徴的な出来事として、「エデン」にいた最初の人間「アダムとイヴ」のイヴに、禁じられていた「知恵の実」を食べるよう蛇がそそのかしたという出来事があります。蛇が悪魔の化身で、アダムとイヴは契約不履行のため楽園を追放されてしまったわけです。
「天使」は当初「神のお告げ」をもたらすなど、神と人間の仲立ちをする存在でしたが、「悪魔」の概念が発達するのにともない設定が肉付けされていくことになります。悪いことをした人間が、契約不履行を避けるため「悪魔にそそのかされた」と言い訳したりするのですが、聖職に就いているような人が誘惑に負けた際には体裁を繕うため「悪魔がすごいヤツだった」と言ったりして、どんどん強い悪魔が誕生してしまうわけです。そんな悪魔に対抗する「神の力」という性質が「天使」に加わり、『聖書』の「黙示録」に記された「天使と悪魔の戦い」に繋がっていくことになるわけです。
 こうした考え方が世界三大宗教であるキリスト教で広まっていき、「天使と悪魔」は対立する存在として広く認識されるようになりました。