真・女神転生IV FINAL(ファイナル)

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2015 October 23真4Fと神話世界への旅

塩田信之の真4Fと神話世界への旅
第1回 一神教と多神教

宗教間対立の元になった神との契約

ところで、神が世界すべてを造ったとするならば、どうしてわざわざ対立する「悪魔」などという存在も造ったのでしょうか。一種の矛盾ともいえそうなこの問いに、神を信じる人々はさまざまな理由を考えています。そのうちのひとつが、強い力を持つ天使が野心を持ったため神に罰せられ「堕天使」となり、それが悪魔となったというものです。「にわとりが先か、卵が先か」みたいなことにもなりかねない、後付け感の強い設定ではあるのですが、そこから大天使ミカエルと悪魔ルシファーがもともとは兄弟だったといった魅力的な話に発展していくことで説として支持を集めていったものと思われます。
 ともあれ、天使も悪魔も神によって造られた存在ということになるわけですが、これこそ「一神教」らしい考え方といえます。神(唯一神)こそが絶対的で、並び立つものはいてはならないのです。
「モーセの十戒」も、最初のひとつめが「神は唯一で、他の神などあってはならない」というもので、契約したものは他の神(宗教)の存在自体を認めないという立場になります。これが契約の第一項なのですから、一神教を信じるものは唯一神を信じないほかの宗教とは対立が運命づけられてしまっているわけです。人間の長い歴史において宗教的な対立から戦争になることが多いのも当たり前といえそうですが、もっとも対立の激しいキリスト教とイスラム教は、信奉する神が同一であるため、ここまでの流れで語ってきた宗教的対立ではなく、広い視野で見れば内部抗争みたいなものだったりするのですからおかしな話です。

だいぶ回りくどい話になりましたが、これでようやく「一神教」と「多神教」が対立しているという話になります。
 それぞれ激しく対立しているのですが、キリスト教とイスラム教、そしてユダヤ教は信奉する神はまったく同じものです。『旧約聖書』に描かれている、神と最初に契約を交わしたアブラハムは共通の始祖ですし、モーセの十戒はある意味形骸化していたりもしますが、それぞれの宗教において共通の基礎ルールとして今も生きています。これらの宗教は総称として「一神教」と呼ばれ、他の宗教とは相容れない立場になります。他の宗教は仏教にしろヒンドゥー教にしろ、多くが「多神教」であるため、「一神教」と「多神教」は根本的に対立する立場にあるというわけです。『真・女神転生IV FINAL』は、そんな思想的背景の上に成り立つ物語となっているのです。