真・女神転生IV FINAL(ファイナル)

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2016 February 19真4Fと神話世界への旅

塩田信之の真4Fと神話世界への旅
第17回 ジークフリードと英雄伝説

ゲルマン民族の英雄ジークフリード

ワーグナーの歌劇『ニーベルンゲンの指輪』の主人公として知られる英雄ジークフリード(ジークフリート)の物語も、ヨーロッパ文化の変革の影響を強く受けた例と言えます。

ジークフリードはゲルマン民族の英雄として古くからよく知られた存在で、北欧神話にも英雄シグルズとして登場しています。英雄像としては北欧神話を代表するスノリ・ストルルソンが13世紀にまとめた『エッダ』や、それ以前からあったともされる『ヴォルスンガ・サガ』などに詳しく伝えられていますが、文書によって内容にずいぶん違いがあります。おおまかに特徴をまとめると、ジークフリード(ここではシグルズ)はオーディンの息子あるいはその血縁で、ドワーフともされるレギンに育てられてグラムと呼ばれる剣をもらい、黄金を守る竜ファフニールを倒します。『エッダ』や『ヴォルスンガ・サガ』よりも後にまとめられた『ティードレクス・サガ』には、竜の血を身体に塗ることで刃を通さない強靭な肉体を得たことが記されています。

北欧神話のジークフリード物語は、ドイツで5世紀くらいの史実が元になって成立した『ニーベルンゲンの歌』と呼ばれる物語が伝わって発展したものと考えられていますが、ドイツでは基本的に竜退治の後の物語になっていました。
 ブルグント国を訪れたジークフリードがそこでクリームヒルト姫と結婚しますが、北の島(アイスランド)の女王ブリュンヒルトとの結婚を望むブルグントの王子に成り替わって戦ったことでブリュンヒルトとも関係を持つことになり、この裏切りが元で王子の師匠であるハゲネに殺されてしまうことになります。
 クリームヒルトとハゲネはこの物語の後日談では主役格となっていて、ブルグント国王がフン族の侵略によって殺され、クリームヒルトはフン族の王の嫁として奪われてしまいます。ハゲネはフン族を相手に奮戦するものの殺害され、最後にはクリームヒルトがひとりで復讐を遂げることになります。

ジークフリードと、クリームヒルトとブリュンヒルトというふたりの女性による三角関係が物語の中心にあるのですが、ブリュンヒルトの国とされる北欧では神話色の濃い形になっていて、ブリュンヒルトにフォーカスが当てられます。ここではブリュンヒルトはヴァルキューレのひとりとなっていたり、クリームヒルトはジークフリードの不貞と暗殺それぞれを背後から操った悪女にされているのですから、ドイツでの後日談とは対照的といってもいい内容です。ワーグナーの歌劇『ニーベルンゲンの指輪』は、北欧版を元にさらにアレンジを加えたもので、クリームヒルトではなくハゲネを悪役に仕立てています。