真・女神転生IV FINAL(ファイナル)

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2015 November 06真4Fと神話世界への旅

塩田信之の真4Fと神話世界への旅
第3回 クリシュナとインド神話

こんにちは、塩田信之です。毎週、『真・女神転生IV FINAL』に関係するふたつのキーワードをとりあげ、そのルーツや現代に及ぼしている要素などを深く掘り下げていくことで、『真・女神転生IV FINAL』の面白さを解読していきます。開発スタッフの談話や制作メモなどから、シナリオや設定にまつわるさまざまなこぼれ話も紹介する予定です。


第3回 クリシュナとインド神話

もっとも発展を遂げた多神教の姿

日本は、多神教文化が基本にあります。憲法に「信教の自由」が定められているため特定の「国家宗教」はありませんが、「神道」がそれに近い位置にあることは間違いないでしょう。国を象徴する存在である皇室が神道のしきたりに則って動いていますし、そもそも天皇は神道における最高神「アマテラス」の子孫ということになるのですから、皇室はある意味「神道」そのものでもあるわけです。国内外でたびたび問題となる「国会議員の靖国神社参拝問題」を見ても、国家の中枢に根強い神道信仰が残っていることは明らかです。

もっとも、民衆の生活レベルで見てみれば「仏教国」であるといってもおおむね間違いではありません。今でこそ都心で神前・仏前結婚式は珍しいかもしれませんが、誰かが亡くなった時にはお坊さんにお経を読んでもらう「仏教式」の葬儀を執り行うことは多いと思います。もちろん、イエス・キリストの誕生日であるクリスマスもキリスト教を意識することなく祝うのも普通なのですから、葬儀の作法が仏教式であること自体意識することは少なくなっているのかもしれません。日本は長い間「神仏習合」によって神道も仏教もいっしょくたになっていた歴史があるため、その境界が非常に曖昧なのです。

文部科学省が毎年「宗教統計調査」を公開していますが、最新の平成26年度版では神道系の信者数は約9100万人、仏教系は約8700万人となっています。3番目の勢力となるキリスト教系の信者数が約300万人であることを考えても、その差はさほど大きくはありません。現実的に「神道」あるいは「仏教」を信仰しているという人は少ないはずですが、そのふたつが国民に浸透していることは間違いないといえます。
 「神道」も「仏教」も、大雑把にいえば「多神教」です。厳密にはどちらにも「多神教的様相」と「一神教的様相」があるという難しい話になってしまうのですが、「最高神」的な存在がいても、多くの「神」的存在が並び立つ宗教観が基本にあるので、どちらかといえば「一神教」よりも「多神教」の範疇に含まれるわけです。そもそも「多神教」という言葉は「一神教」の立場から見て「一神教ではない」みたいな意味合いで使われることが多いですが、「多神教」と言われる側からしてみれば「宗教的な原理はひとつ」という意味で「一神教に近い」と言えたりもするので、単純に分類できるわけでもないのです。逆の立場で見れば、「一神教」の方も、天使は使徒だからといってみても、「聖母」や「聖人」に対する信仰形態は「多神教的」ではないのかという疑問も湧いてきます。

ここで今回のテーマであるインドに視線を向けてみましょう。インドの宗教といえば、なんといってもまず挙げられるのは「ヒンドゥー教」です。日本の外務省によると、2011年の国勢調査でヒンドゥー教徒は79.8%、イスラム教徒が14.2%、キリスト教徒が2.3%、シク教徒が1.7%、仏教徒が0.7%、ジャイナ教徒が0.4%となっています。ヒンドゥー教徒の割合が圧倒的に多いことがわかります。
『メガテン』シリーズでもおなじみの「ヴィシュヌ」や「シヴァ」といったインド神話の神々が多数含まれる「多神教」である「ヒンドゥー教」は、インドにおいては今も広く信仰されているのです。「多神教」の代表的な例といえるギリシアや北欧・ケルトの、今では基本的に神話上の存在とは大きな違いがあります。歴史で習う「世界四大文明」のひとつ「インダス文明」の頃からその源流があったと考えられる「多神教」が、今に至るまで発展を続けてきた姿がそこにあるわけです。